バッハが教えてくれた癒しの不協和音
不協和音で濁っている音。
ぶつかり合う音。
キンキンと響く音は耳障りになるから、温かみのあるふんわりとした音で弾くことにしています。
そんなふうに、神経を研ぎ澄まして弾くバッハの曲は集中力が必要で、
だからなのか時間の感覚がなくなる、そんなところが好きです。
自分の気持ちが大雑把な時は弾くべきではなく、
少し神経が過敏になっている時こそ向いているのだと思います。
バッハの2声や3声の音楽では、それぞれのフレーズが複雑に絡み合います。
練習したての頃には複雑に聞こえ、実際にはまだ理解できていないことがたくさんあります。
ハモったり、追いかけたり、不協で少し危険な音を、練習をくりかえしているうち、
どこか他人事のように弾いているのに、いつしか自然と自分の言葉のようになっていきます。
その、にごりやぶつかった響きは争いではなく、それぞれ独立したフレーズは、単細胞になり渦の中へ入っていくような感じです。
自分が弾いていることさえも忘れてしまうような感覚になります。
あまりにも練習に一生懸命になって、ふと気づくと呼吸するのを忘れていたりもして、、
よくあるんだけど、力みすぎちゃって大事なことができていない。
呼吸が不安定になると体がつっぱり、どこかを集中して酷使してしまうので、まずはリラックスして弾けるようになるまで練習します。
いつの間にか、ぐるぐるとした渦の中に入っていくと、何度弾いても引っかかるところが、やがて無意識で弾けるようになり、自然と音が重なっていくのがわかってきます。
一瞬、不協和音できつい音になったり、結び目が解けるように一本の線になったり。
フレーズそのものが癒しであり、揺らぎなのかもと思っています。
あんなに練習が大変だったのに、リラックスした空間で無意識に2つや3つのフレーズを一人の人間が弾くことで、自信が持てるようになるし。
ただ何も考えず、音楽と同化する時間で、とても満たされます。
昔よく「必ずバッハを勉強しなさい」
と言われてきたけれど、それがなぜなのかよくわかりませんでしたが、こんなにも深い意味があったのだと、かなりあとになって気づきました。
バッハのシンフォニア1番
不協和音を聴きたい時はあえてオルガンの音で弾きます。
渦の中で無意識に弾けるようになる裏側には、とても繊細な「身体の使い方」があります。別の記事で少し深く書いてみました。
【ほのぼのした音楽&リラックスしたピアノ】
楽曲は、YouTubeやInstagram、TikTokなどの動画BGMとして自由にご利用いただけます。
気に入ったら、ぜひプレイリストに入れて、作業中やリラックスタイムに聴いてみてくださいね。
English Version/The Healing in Bach’s Dissonance
A dissonant sound.
Tones collide and rub against each other.
Warm and soft,
a dissonant chord needs a delicate touch.
Playing Bach requires focus.
I don’t play him when my mind is noisy.
On sensitive days, when I feel fragile,
his music fits me best.
Two or three voices run in different directions.
They seem unaware of each other,
yet eventually they meet, blend, and breathe together.
At first, it was only confusion.
I practiced without understanding a thing.
Little by little, the dissonance became natural.
It turned into a single voice—
not fighting, not trying to win,
just quietly existing in its own blur.
Sometimes I get so absorbed that I forget to breathe.
Tension weakens the sound.
So I practice until my body can play
before my thoughts interfere.
And one day,
a phrase that tripped me for weeks
suddenly loosens,
as if the hands learned a secret language.
A knot of dissonance
melts into a single line for a moment.
That small release feels like healing.
After long practice,
playing two or three voices unconsciously
gives me confidence.
But more than that,
I feel myself dissolving into the music—
no thoughts, just existence.
People used to say,
“You must study Bach.”
I never understood why.
Now I do.
Bach: Sinfonia No.1 in C Major
When I want to hear the dissonance clearly,
I choose an organ tone.
I let the collision stay raw,
until it slowly settles into calm.



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